2014年08月28日

東京物語

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1953年 日本
監督: 小津安二郎
出演: 
笠智衆:平山周吉
東山千栄子:とみ
原節子:紀子
杉村春子:金子志げ
山村聰:平山幸一
三宅邦子:文子
香川京子:京子
東野英治郎:沼田三平

<YAHOO! 映画解説>
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日本映画を代表する傑作の1本。
巨匠・小津安二郎監督が、戦後変わりつつある家族の関係をテーマに人間の生と死までをも見つめた深淵なドラマ。
故郷の尾道から20年ぶりに東京へ出てきた老夫婦。成人した子どもたちの家を訪ねるが、みなそれぞれの生活に精一杯だった。
唯一、戦死した次男の未亡人だけが皮肉にも優しい心遣いを示すのだった……。
家でひとり侘しくたたずむ笠智衆を捉えたショットは映画史上に残る名ラスト・シーンのひとつ。
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小津安二郎監督の映画は随分観ているが、最高傑作という評価を得ているこの作品を観ていなかったのは、手落ちであった。
「東京家族」を観たこともあって、原点を訪ねたと言える。

尾道に暮らす周吉とその妻のとみが、東京に暮らす子供たちの家を久方振りに訪ねるべく、上京してくる。
はじめは開業医をしている長男の幸一の家。
孫二人は、久しぶりに祖父母にあっても素っ気ない。
そして東京案内をしようとしていた矢先、幸一は往診を依頼され、外出は取りやめとなる。

美容院を経営する長女の志げも、毎日仕事が忙しくて両親をかまってやれない。
代わりに仕事を休んで東京案内をしたのは、戦死した次男の妻の紀子であった。
それだけではだめだろうと、幸一と志げはお金を出し合い、両親に熱海旅行をプレゼントする。
だが、夜中まで騒ぐ若者客たちに、年寄り夫婦は安眠を妨げられ、居心地悪く早々に引き揚げてくる。
だが、予定を切り上げて帰って来られても志げの家も都合があり、両親は泊まるところがなくなってしまう・・・

基本的なストーリーは、 「東京家族」と同じ(といってもこちらが元祖ではあるが)。
家族構成(昔は兄弟が多かった)と時代背景によって微妙に設定が変わっている。
幸一が両親を東京案内に連れていこうとする時、「昼はデパートの食堂で食べるか」との会話が出てくる。
この時代、デパートの食堂にはステイタスがあったのである。

志げの経営する美容院は自宅兼用であるが、この時代は美容院の入り口で靴を脱いでいる。
そして居間は美容院から丸見えで、家の者はお客さんの後ろを通って居間に入る。
一人暮らしの紀子はアパート住まいで、トイレと台所は共用。
両親の訪問に際し、紀子は隣の家にお酒ととっくりとお猪口を借りに行く。
夏場ではあるが、昭和28年のこの時代、扇風機はまだなく、みんな団扇を手放さない。

東京で子供たちは暮らしに余裕がなく、両親はそれでも満足して帰路につく。
21時東京発で、会話から到着は翌日の13時。
「名古屋あたりで夜が明ける」とのセリフもある。
今ならハワイへ行けてしまう時間であるが、まだまだ日本は広く、東京も遠かったのである。

子供たちも自分達の生活優先で、そんな状況を二人の親もよくわかっていて、「仕方ない」と理解する。
この時代に、「仕方ない」と言ってもらえた世代の人たちも、今は自分達が親の時代。
今は逆に自分たちが、「仕方ない」と言っているのだろうと思う。
そういう意味で、 「東京家族」は、この映画の幸一たちが親になった映画なのかもしれないと思う。

そして義理の娘ながら、両親にひたすら尽くす紀子。
こういうお嫁さんが理想的なのは確かであり、そこにはみんなの願望もあるだろう。
「東京家族」では、次男は頼りないけど思いやりのある男であったが、こちらの原点では「戦死」。
「まだどこかにいるような気がする」と言う老母に、現実的な老父は「もう8年も経っているから(ダメだろう)」と諭す。
これも時代だろう。
ただ次男の嫁の存在が、どちらも観る者の心を癒してくれるのは同じである。

親というものは、いつの時代も変わらず、そして子供たちの言い訳も同様。
普段、心苦しい思いをしている者ほど、この映画には心打たれるかもしれない。
紀子の姿に理想を見るものの、誰もが幸一や志げの立場で言い訳をしているのかもしれない。
これまで観なかったのが残念な、心に残る映画である・・・


評価:★★★★☆



   
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2011年08月04日

【風の中の牝鶏】My Cinema File 737

風の中の牝鶏.jpg

1948年 日本
監督: 小津安二郎
出演: 佐野周二/田中絹代/三宅邦子/笠智衆/村田知栄子

<STORY>********************************************************************************************************
間借り生活の時子は、小さい浩をかかえ、まだ復員してこぬ夫修一の帰りを待ちわびていた。
時子は頼りにしている友達秋子を時折訪ねては一枚、二枚の着物を託し、それを同じアパートの織江に買ってもらうのだった。
今日も時子は秋子を訪れた。
織江はそうした時に「時子さん、きれいだからその気になりゃ、こんなことしなくってもいいのに−−」というのだ。
その日家に帰った時子は、突然の浩の発熱におどろきうろたえて近所の病院へはしった。
浩は急性大腸カタルであった。
何本も注射が打たれ、そしてようようのことで命だけはとりとめることが出来たが、次に時子の上にふりかかって来たものは病院の支払いであった・・・
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1948年制作の小津監督作品。
これまでの家族に目を向けた作品からちょっと嗜好が変わり、夫婦関係へと視線を移した作品。
時代背景ならでは、のところがある。

冒頭、巡査が各家庭を回っている。
住んでいる人物を確認するのであるが、なかなか威張った態度なのは戦前の名残りなのだろう。
大家が問われるまま、主人公の時子は間借りしていると答える。
「間借り」という言葉も今は死語になりつつある。

「ご主人はまだ帰らないのかね」と巡査が問う。
言わずもがなだが、ここでは復員という意味であるが、これも当時ではここかしこで聞かれた問いなのだろう。
いまだ帰らぬ夫を待つ時子は、一人息子のひろしと共に暮らしている。

針仕事を請け負っているが、当然それでは生活も苦しい。
友人を訪ね、着物を売ってもらって糊口をしのぐ。
それでさえ、もう最後の着物である。
買い取った知人は、「きれいなんだから、いくらでも稼げるよ」と甘い囁きを寄せる。
現代と違って貞操観念の強い当時、苦しくてもそんな囁きには乗らない時子。

しかし、ひろしが急病で入院する。
かろうじて一命を取り留めるが、安堵したのも束の間、今度は入院費用の支払いがのしかかる・・・
もうあてもなく、ついに時子は一度だけ体を売る。
幸運なことに夫修一は復員したが、その事実を知ると修一はそれが許せない。
時子にあたり、もやもやを抱えたまま自分も女を買ってみたりする。

現代であれば、お金がなければあちこちから何かと借りる手段は豊富だ。
こうした貧困から体を売るケースは稀なのだろう。
その代わり、現代では遊ぶ金欲しさに若い女性もホイホイ体を売る。
その手段も援交やアダルトビデオや風俗など様々である。
はたしてそれは進歩なのかどうかはわからない。

そんなに悩む事なのか、とついつい夫には苦言を呈したくなる。
今の我々の感覚とはだいぶ違う気がする。
時代によって価値観は変わる。
それがいいのか悪いのかはよくわからない。
夫も妻も苦しい時代を生き抜いた。
そんな時代を背景にしたストーリーは、いろいろと考えさせてくれる。
その後この夫婦がどんな暮らしを送ったのか、ちょっと知りたい気持ちにさせられた・・・


評価:★★☆☆☆
   
   
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2011年07月04日

【長屋紳士録】My Cinema File 726

長屋紳士録.png

1947年 日本
監督: 小津安二郎
出演: 飯田蝶子/青木放屁/河村黎吉/笠智衆/坂本武

<STORY>********************************************************************************************************
ある日占見登竜堂先生は一見戦災孤児のような少年幸平を拾ってきた。
しかし自分で育てる力のない登竜堂はそれをおたねに押しつけた。
おたねは内心甚だ迷惑に思ったが、別にどこへ行かすあてもないので仕方なく一夜だけ泊めてやる。
翌日追い出そうとしたが、近所の家々のどこも幸平を引き取るところはなく、やむなく父親を探して返しに行く事にするが・・・
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戦後最初の小津映画である。
物語は占い師(笠智衆)が一人の子供を拾ってくるところから始る。
浅草で父親とはぐれたのだという。
同居する為吉は頑として泊める事を拒絶。
やむなく向かいのおたね(飯田蝶子)のところに連れていく。

この子供の芸名がなんと「青木放屁」。
以前にも「出来ごころ」をはじめとする戦前シリーズで「突貫小僧」という芸名で出演していた子役俳優がいたが、今度は「放屁」ときた。
どちらにしてもふざけた芸名だと思うのだが、そうした事が当時は何の抵抗もなかったのであろう。

おたねは寝小便もするこの少年を嫌って追い出そうとする。
しかし、父親を探して行った茅ヶ崎では、置き去りにしようとしてもできず、ずるずると一緒に暮らす。
その間、冷たく接する。
ある朝、寝小便をした少年はおたねに怒られるのを恐れて逃げてしまう。
いなくなってみると、始めておたねは少年を愛おしく思う自分に気がつく・・・

戦後2年。
道路も荒れており、あちこちに荒廃の影が漂う。
動物園ではキリンの看板に「ヂラス」とカタカナ英語が併記されている。
少年と動物園を訪れ、写真館で写真を取り、服も買ってやる。
少年と二人でずっと暮らしていく事を夢見始めた矢先、少年の父が迎えにやってくる・・・

ラストでは上野公園にたくさんの子供たちがいるシーンが登場する。
戦争孤児であろうか。
登場人物たちは、当初少年の面倒を見るのを嫌がるが、その背景にはたくさんの戦争孤児の姿があるのかもしれない。
一概に現代の感覚で無慈悲な人たちだと思うのは当たらないかもしれない。

一貫して家族の姿を描いてきている小津監督であるが、血はつながっていなくともこれもそんな家族の物語と言える。
最後のおたねの心情にちょっと同情してしまった・・・


評価:★★☆☆☆

     
     
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2011年07月03日

【父ありき】My Cinema File 725

父ありき.jpg
     
1942年 日本
監督: 小津安二郎
出演: 笠智衆(堀川周平)/佐野周二/津田晴彦/佐分利信(黒川保太郎)/坂本武(平田真琴) /水戸光子(平田ふみ) /大塚正義(平田清一) /日守新一

<STORY>********************************************************************************************************
中学教諭の堀川周平は、妻の亡き後、男手一つで息子の良平を育ててきた。
つましいながらも幸せな生活を送っていたが、突如、トラブルに見舞われる。
修学旅行の引率で箱根の芦ノ湖を訪れていた時、ボートが転覆して生徒の命が失われてしまったのだ。
 責任を取って辞職した周平は、生まれ故郷の信州に退く。
豊かな自然の中での新しい生活。
幼い良平にとって、父親と連れ立って釣りに出掛ける事が一番の楽しみになった。
 しかし、親子一緒の楽しい日々はそう長くは続かない。
良平を上の学校に行かせるためには安定した収入が不可欠だ。
周平は息子を中学の寄宿舎に預けると、商社マンになるために上京した・・・
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制作年は1942年の小津監督作品。
1942年といえばすでに戦争は始っている。
この作品の完成は4月。
まだミッドウェーでの敗戦前で、日本も元気が良かった頃である。
そんな時代背景はこの映画には出てこないが、そんな事を考えながら観る。

堀川周平は息子と二人暮らしの中学教師。
修学旅行で教え子が芦ノ湖で禁止されていたボート遊びをしていて、死んでしまう。
教師という責任に耐えられなくなった周平は、職を辞して故郷に戻る。
しかし息子の教育費用を稼ぐ必要もあり、単身東京へと出ていく。
親子離れ離れの生活が始る。

時は流れ、息子も大学を卒業し、秋田で教師となる。
父とは時折温泉を訪れるという生活。
しかし父との暮らしを願って、東京へ出て共に暮らしたいと父に告げる。
父は教師という職業の大切さを説き、翻意させる。
朴訥と語る父の姿に、昔の父親の威厳を感じる。

昔の教え子たちに誘われてクラス会に出席する周平。
ビールはなく、すべて日本酒というのも時代だろう。
教え子たちに「結婚している者は?」と周平が尋ねると、全員の手が上がる。
今の時代だとどうだろう。

適齢期になった息子に対し、周平は昔の同僚の娘との縁談を勧める。
息子の返事は、「お父さんにお任せします」。
これも時代なのであろうか。
親が決めた結婚というのもどうなのであろう。
恋愛結婚至上主義の現代であるが、若さゆえに「愛こそすべて」と信じて失敗する。
いろいろと経験した親が、自分の経験を踏まえて選んだ相手というのも、実は良いのかもしれないとふと思う。

兵役検査で合格する息子に目を細める周平。
母に報告しなさいと告げ、息子はきちんと上着を着て仏前に向かう。
本来あるべき親子の関係がそこにあるように思える。
今は70年前と比べて本当に幸せな時代なのだろうか。

ラストで息子は父の決めた結婚相手とともに秋田へと向かう。
その先にある未来はというと、戦局は厳しくなり息子自身の身の上もわからない。
少なくとも彼が向かう未来よりは、今の方がマシだとは言えそうな気がするが、果たしてどうだろう。
映画の世界と言ってしまえばそれまでであるが、こういう親子関係があるべき姿なのかもしれないと思う一作である・・・


評価:★★☆☆☆


     
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2011年06月19日

【戸田家の兄妹】My Cinema File 721

戸田家の兄妹.jpg

1941年 日本
監督: 小津安二郎
出演: 藤野秀夫/葛城文子/吉川満子/斎藤達雄/三宅邦子/佐分利信/坪内美子/高峰三枝子

<STORY>********************************************************************************************************
実業家として財をなした戸田家の主・進太郎 (藤野秀夫)が急死し多額の借金があることが判明した。
次女綾子(坪内美子)の嫁ぎ先雨宮(近衛敏明)の発案で、残った財産を処分し返済にあてることになる。
独身で気ままな次男昌二郎(佐分利信)は、屋敷まで処分してしまった母(葛城文子)と三女節子(高峰三枝子)を、長男夫婦(斎藤達雄・三宅邦子)に預け海外勤務を申し出て中国へ渡ってしまった。
しかし、母と長兄の嫁は上手くいかず、二人は長女千鶴(吉川満子)の家に身を寄せるのだが・・・。
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制作は1941年。
この年の12月8日、真珠湾攻撃から太平洋戦争が勃発する。
日米交渉も緊迫感を高めていたと思うのだが、映画にはそんな雰囲気は微塵もない。
映画の中だけは平和そのものである。

冒頭、戸田家の面々が集合し、記念撮影をする。
主戸田進太郎を中心とし、母の還暦祝いが行われる。
みんなで食事をしたその夜、幸せに包まれた中で進太郎が急死する。

進太郎は成功者である一方、多額の借金があり、家屋敷をすべて売り払って返済に充てる。
その結果、住む家を失った母と三女節子は、長男夫婦の家に身を寄せる事になる。
しかし、事あるごとに兄嫁と母妹はギクシャクした関係に悩む事になる・・・

流れはスムーズだ。
幸せの絶頂から、不自由な同居生活へ。
嫁姑の対立。
どちらが悪いとは言えない。
どちらも言い分はもっともだ。
ただ、お互いに少しずつ譲り合えば良いのだ。
そんな事ができない。
時代は変わっても、どこにでもある話は変わらない。

母と妹は次に二女の家に身を寄せる。
しかし実の母娘でも問題は解決しない。
逆に肉親である分、遠慮のないモノ言いが出てしまう。
居にくくなった母と節子は、父の残した別荘へ移りそこで二人で暮らし始める。

とはいえ、住み込みのお手伝いさんを伴っての移動だから、落ちぶれても庶民生活よりは上なのであろかと思われる。
そんな状況下、仕事で天津に行っていた次男が帰ってくる。
母と妹の状況を見て、兄妹に怒りを爆発させる・・・

家族に対する思いの溢れた映画。
観終わって心に温かいものが残る。
次男は二人を天津に誘うが、4年後にそれは大変な結果になる事を、観ている者は想像してしまう。

ここまでお馴染の飯田蝶子はお手伝いさんとして、またまた登場。
笠智衆も坂本武もちゃんと登場する。
三女役の節子はあの高峰三枝子である。
フルムーンのおばさんもさすがに若々しい。

映画とは時代を映す鏡であるという事を、強く意識させられる映画である・・・


評価:★★☆☆☆


      
posted by HH at 22:31 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 小津安二郎監督作品